2014年11月24日 (月)

むしの会吹奏楽団 第30回定期演奏会

むしの会、要するに出身高校吹奏楽部のOB会である。

高校生のとき、言っちゃあなんだが今思えば本当に青春をかけて皆で作りあげたという言葉にふさわしいあの演奏会、その思い出の場所杉並公会堂で、その思い出の曲アルメニアンダンスを演奏するという。

あの夏の日々、繰り返し繰り返し練習した曲。

これは万障繰り合わせて行かねばなるまいのお告げであるやもしれぬ。

ということで、日曜午後、どっこいしょ。
高校時代の友人と連れ立って杉並公会堂へ。


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あの頃はうんと古びててボロかった公会堂も今やピカピカ。

Cafe
明るく洒落たカフェまである。

Stage
…ああ、そうそう、この感じだ。
やっぱりわくわくするよ、このコンサートホールの晴れがましい雰囲気。

Stage1
懐かしい顔もちらほら。
OB会なので、現役から還暦過ぎまで、幅広い年齢層。

Stage2

OB会の吹奏楽団なんて、学生と違ってそれぞれが仕事しながらだから、合わせる練習時間なんかもろくに取れないはずなのに、驚くほどの難曲をガシガシ。

プロになった人もいて、そういう人たちがひっぱってくれるせいもあるけど、やっぱりすごいなあ。そして何より、演奏を思い切り楽しんでいる感じがとっても快いのだ。

ちょっと動画でさわりの部分。こんな感じ。ベートーベン、エグモント序曲。

そして初めての試み、今の部の顧問の先生は実はプロのピアニストでもあるらしい。彼女とのコラボ、ラフマニノフのピアノ協奏曲である。Stage3
白い指先が鍵盤の上を華麗に踊る、美しきピアノソロ。
いいなあ、今の現役生はこんな素敵な音楽の先生で。

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…そして件のアルメニアンダンスである。

思い入れのある曲だからだろうか。すごくいい曲に感じられた。民族衣装を着て踊る人々が思い浮かぶような。

トロンボーンパートが見せ場盛り上がり部分でもうバリバリに響かせてくれてものすごく気持ちよかった。スライドを動かす腕が動いてしまいそうになる。

あの頃感じたのと同じように、ひとつの音楽を、ひとつの躍動する美しい宇宙を一体となって作り上げようとする、ひとりひとりが律せられたパートを受け持つことによって全員がひとつの全体性としての高次の調和になろうとする、その無心の祈り、イデア、芸術、美への祈り。その緊張感に満ちた皆の呼吸が感じられる。

高校のあの夏の練習の日々がもりもりよみがえってきて、もう聴いてるだけで自分が演奏したようにぐったり。懐かしさで泣きたいような気持ち。

*** **** ****


ステージ入れ替えの間には、えへへ、一緒に演奏したこともあるね、懐かしいお二人のトーク。それぞれプロになった彼と彼女、ステージ慣れしていて司会もお手のもの。Shikai


一部、二部の難曲を経て、第三部は打って変った楽しいポピュラーミュージックである。

「じ~んせい楽ありゃ♪」のあの曲も聴かせてくれましたな。

トロンボーン奏者だったからやっぱりトロンボーンびいきなのだ。
我がパートのキラ星プレーヤー、後輩にあたるM君フィーチャー、サンバで見事なソロ。

プロになってディズニーランドでブイブイ鳴らしてるという彼、鳴らしまくってくれてて気持ちよかった!

これじゃああんまり伝わらないけど、ホールではすごくよく響いてたんだよ。


〆にはいつも校歌斉唱。

懐かしい、忘れていた歌。この高校出身の詩人谷川俊太郎作詞のなかなか荘厳な歌である。

ああ、しんみり。

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無事終了。

裏方さん(現役生を使ったらしい…)含めスタッフみんなで記念撮影のシーン。
Stage4
お疲れさまー!

とてもとてもよかったよ、ありがとう、ありがとう。

ああ高校時代って、音楽って、もうとびきりの特別だって思った。皆と一つの音楽を作り上げる恍惚の時空間。あんな高校時代があってよかったね、じいん。

…というような思い出話をぽつぽつ語りあいながら、少し寂しいような切ないような帰り道であった。
Tree
帰り道はクリスマスの街、ホールから出たところには大きなイルミネーションツリーが輝いていた。

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2014年10月13日 (月)

まりの・るうにい個展

まりの・るうにいさんの個展があるといういうので、日曜日、恵比寿まで行ってみた。

(ヤレどっこいしょ。)

稲垣足穂の本の挿絵の仕事をされた方である。

…足穂、好きなんである。

月、星、キネマ、ポリス、ぜんまい仕掛け、ガス灯、薄荷水、ココアにチョコレット。

大正昭和の都会の夜、世界すべてが機械仕掛けのニセモノめいたものに見えてくる、不思議なダダイズム的天文幾何学ファンタジーに包まれた雰囲気。

有名なのは、足穂にしか書けない短詩集のような「一千一秒物語」。私の好きなバンドもこの中の一篇からその名前を取っている。

月光下騎士団MOONRIDERS。

足穂からこの本を贈呈された芥川龍之介は、

「大きな三日月に腰掛けているイナガキ君。本の御礼を云いたくてもゼンマイ仕掛の蛾でもいなけりゃ君の長椅子へは高くて行かれあしない」

なあんて洒落たことを言っている。

これは人間や生命や自然の湿った柔らかな異界性とはあえて一線を画した、街の、都会の、文明科学のファンタジーなのだ。

…中編「星を売る店」なんかすごく好きだったなあ。人が街の楽しさを愛する、モノに物語を求めるきわめて現代的な経済流通システムの原型を示すような商品のファンタジー、物語性が仕込まれている。魔法のような科学、科学のもつ魔法。それはいわば世界の不思議、センスオブワンダー。

 *** *** *** ***

ということで足穂といえばお月さま。月食以来どうも月づいているようだ。
Suzu
ということで、恵比寿駅ビル内成城石井の店頭山積み鈴カステラなんかにも、こないだの月食を思い出したのであるよ。

皆既月食カステラって作ったらいいのではないかしらん。欠けてゆく月食の様々の段階を茶と白のカステラで表現する天文浪漫菓子。売れると思うなア。

さて、恵比寿の街。

駅から二分出値、地図だとそろそろこのあたりかな、
と見回したところで、すごいインパクトの建物を発見。
Mari1
かっこいいなあ…と写真を撮っていてふと看板を見たら、

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あら、ここだあ。ここの三階。

これはもうこの建物の中に入るというだけでワクワク期待が高まってきてしまうレヴェルの高さ。

すみずみまで外連味のない気骨のセンスのいきわたったホンモノ感。
なんて風格のあるお洒落な建物なんだろう。
Mari11
ここは、中二階。二階のお店の店員さんの休憩場所になっているようだ。

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蔦の~からま~るチャペ~ルに~♪

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絡まる蔦は、めくらぶどうだ。うつくしい青と紫。

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三階。ここから先はお客さんは上れません。

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いくつかの秘密めいたドアを通り過ぎながら細い廊下を進み、突き当り。ここだ。

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ものすごく残念ながら店内の写真は撮れないので撮影はここまで。

…色彩の美しいパステルを駆使した絵ももちろんだけど、空間としてほんとうに素敵な画廊だった。画廊というか、アンティーク雑貨と古書の店。

昔見た夢を取り戻す気持ち。小さな秘密の記憶の匂いのする空間。お洒落で素敵な女主人。

るうにいさんの手がけた古いレナウンCMのフィルムからこさえた、光に透かして見る可愛い覗きからくりなんかもあって、小さな宝物でいっぱいの部屋だった。

隅から隅まで歴史と風格のある気骨のあるお洒落さ、古いフランス映画のような、パリの裏町のような。

そうそう、このCMとても楽しいのだ。

夢見心地で外に出たら、朝からずっと曇天だった空にふわりと晴れ間がのぞいていた。

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貴重でセンスのいい作家さんの絵を選んで個展をやっているようだ。

また来れたらいいな。この空間に、夢の見られる場所に。

Soup
珈琲啜って帰り道。駅ビルにはスープストックTOKYO。ゴッホのたまねぎの絵をテーマにした飴色炒めた玉葱とチーズのスープだって。都会は食も夢と文化にしてしまう。おいしそう。

Soup1
果物を漬けこんだ壜がずらり。こういう風景って夢ゆめしい…

Mari
スーヴニールは絵葉書。

頑張って行ってよかった。足穂世界たっぷり堪能。
足穂の世界にぴったりの素敵な絵やインテリア。ああ、あの部屋に住んでみたいなあ。

高校生や大学生の頃憧れたような、ちょっと背伸びのスノッブなお洒落、古いフランス映画のような夢。世界がたくさんの物語で満たされているように思えてくる。

お洒落だということが、やたらと何かを模倣したピカピカしたものでない、大衆的でない、巨大な市場経済に呑まれていないものであるとき。

それは、こんなにもひっそりとした個人の夢の場の物語を膨らませる喜びの場でありうるということを久しぶりに感じたのであるよ。

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2014年9月15日 (月)

三鷹「星と森と絵本の家」その2

展示コーナーにかばんは持って入れないのでロッカーに。

撮影はOK。カメラやなんか入れるために透明の袋を貸出してくれる。
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廊下の壁には歩きながら読む絵本形式になったタブロー。公募で入選した作品らしい。

そしていよいよ中へ。玄関で靴を脱ぐ。

お邪魔しま~す。
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おおっ。

いい…この部屋。
この緑の庭に面した障子越しの光、しっとりと落ち着いた佇まい。

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大正から昭和の時代が部屋の隅々にまでそのまま残されている。

懐かしい、子供のころおばあちゃんのところにいったときの思い出のようなイメージ。

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ああ夢のような本だらけの部屋。

子供が自由に絵本を読んだり遊んだりしていいのだ。

子供の頃、本が好きで好きで、図書館の書棚の前に座り込んで夢中になり、永遠の中にいた。時を忘れていた。あの至福を思い出す。

こんな秘密基地に住みたい。

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ここは「理科室」ってあった。もと台所。顕微鏡覗いてみてくださいって言われて覗いたら、蝶の羽根の鱗粉。「ワー面白いけど気持ち悪いですねえッ。」

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さて、ここは、芸術、想像、絵本の家でもあり、天文、自然科学の夢を育む家でもある。
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歴史の浪漫、古代生物たち。マンモスや恐竜の展示に混じって…

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古代の人間。

そして。
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堂々とカレのお姿も。

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宇宙の広がりを想像させる展示の部屋、絵本もその関係。

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こういう南側の廊下のある作りっていいんだよなあ。

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一番奥には、三畳くらいかな、小さな小さな玩具部屋。秘密基地のような。オルガンはちゃんと鳴るよ。

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ちいさなちいさなちゃぶだい。

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畳はさりげなくくまモン。小さな子供のいる家族のための心配りが随所に仕掛けられているのだ。玩具部屋には電車の模型やたくさんの玩具、段ボールでできたシステムキッチン。

入口近くにちっちゃな子を遊ばせながらお母さんがゆっくりと授乳できる授乳室。

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素敵なアンティーク。碁盤や鍵は今でも現役のおうちはありそうだ。

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外側を回ると本当に普通のおうちの玄関だ。

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帰り道、お洒落などんぐりが落ちていた。カーリーヘアー。まだ青いね。

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廊下に展示されていた絵画は、青野広夢さん、大学出たての新進の作家さんのものらしい。ミヒャエル・ゾーヴァみたいな深みのある暖かい色彩とタッチ。

物語が思い浮かんできそうな素敵な絵だ。
絵葉書、マナティのも買ってくればよかったかな。

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三鷹「星と森と絵本の家」その1

三鷹の国立天文台の敷地内にそんな素敵な名前の家があるという。

調べてみたら、こんなところ。

天文台の森の中、大正時代の官舎をそのまま利用したという趣きのある家と庭、そして絵本。ううむ。

駅からは不便だけどここからバイクでなら行きやすいかも。

…ヨシっ!

ということでうらうらと晴れた初秋のびゅーちふるさんでー、爽やかな青空の下ぶうん、と走って辿り着いた。
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空が広い。素敵な武蔵野の森こんもりの中に天文台。

何だか浪漫だなあ。
俗世を離れた大勢の星読み博士が研究に没頭していそう。

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公共の公園みたいになってるんだな。子供たちが野球やってるよ。

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ああこんな美しい日曜日だ。さらさら金色の秋の風、森のいい匂い。

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ここだ!

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看板類がすべて自然木。すべてが丁寧が可愛らしい。

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玄関脇に「むかしあそびコーナー」が。けん玉と独楽。

独楽回しは夢中になったことがあるぞ。結構難しいのだ。

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見学者数の管理もこんなにエレガント。
入るときに木製のカラフルな札を木にかけて、帰りに専用BOXにコトン。

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きれいな緑の中庭。テラスにはかっこいい望遠鏡。さすが天文台。
「のぞいてみてね。」とある。どれどれ

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あんなに遠くの木の実がこんな風に!

ベランダに望遠鏡あったら楽しそうだなあ。友人の夫が天文マニアで、休日ごとに望遠鏡担いでぶっとんでいってしまうって嘆いてたけどわかる気がする。見事な天体写真を撮っておられた。羨ましい。

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これが展示されてるおうち。いい感じだなあ。

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庭にはわくわくするような木工コーナーがしつらえられている。お父さんの日曜大工小屋みたい。

自然素材の木の枝がたくさん用意してあって、数十円から数百円で木工細工体験ができる。せっせとゲージツ活動にいそしむ家族連れ。これは子供だったら夢中になるぞ。

作品群、なかなかの出来である。

…ヲヨヨ。
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期待と不安でそろりそろりと歩いたが遭遇できなかった。

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よしずに這わせてあったの、瓢箪だった。なってるー!

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匂いしないなあ。

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う~ん、すべすべ。

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よしず越しにきらきら緑金のそよ風、気持ちがいいねえ。

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お、蜘蛛の巣が。ひょっとしてリアルな展示物かしらん、なあんて思ったり。

さあ、次は中に入るぞ。

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2014年4月22日 (火)

都会のパン屋 絵本のことなど

花冷え、という生易しい言葉では足りない。これはちょっと本格的に寒い。

冬が戻ってきてしまったような四月も下旬の日曜日。

空もどんより世界じゅう薄暗くて気持ちも塞ぐので、日曜日にこれではいけない、と、ちょっと気になってた絵本屋さんの個展を覗きに吉祥寺へ。

花壇にも道端にも、この寒いのに春の花健気に咲いている。Hime
何だか久しぶりに見たような気がするよ、かわいいびんぼうぐさ、ヒメジオン。

そして、電車でゴトゴト、街である。ココロは街モードへ。

自然の天候が厳しく暗く冷たいときは、街や映画や本、人の夢の紡ぐ楼閣、明るいあたたかい灯りの灯ったおうちの中のような幻想の都会で心をあたため耕すのもよい。

耕す。カルチャーの語源。耕す対象は大地だけれど、その大地は精神的な大地である。天に向かって、イデアに向けてするすると伸びてゆく夢や憧れを育むために、大地となる心が固く枯れてしまわないように日々新鮮であるように柔らかく耕しておくのだ。

…そして吉祥寺。この街は特別。独特の中央線の文化の匂い、我が青春時代を育んだ風景の街である。

駅ビルアトレはいつもピカピカの流行の先端、洗練された鋭敏なセンスの素敵なモノたちの紡ぐ暮らしの夢憧れでいっぱいだ。
Cerial
中近東の市場のイメージ、ものすごくお洒落にしたてたドライフルーツ、ナッツ、シリアルの量り売り。ハンドルまわすと各種好みのシリアルがざらざら、なんて楽しくてわくわくしてしまう。(可愛くないのは値段!いくら厳選された身体にいい自然食品でも毎日普通に食べられる値段じゃないんだもの。ファッションのバカー。)

ほんとうのトルコの市場や駄菓子屋みたいに小銭握って気軽にたくさん選べる値段だったらどんなにわくわく楽しいだろう。あれも、これも、袋に詰めて。

イタリア食材屋ディーン&デルーカもとても素敵。いつも麗しいパンのウインドウを眺めてはウットリ。舶来の絵本の中から飛び出してきたようなお洒落でおいしそうなパンばかり。

Pain1
この空洞が魅惑的なのだ。きっとカヌレ的にぐに~もち~っとした食感なんだな、ウン、りんごパンだな。

Pain2
オレオをざくざく突き立てた斬新なマフィン、甘酸っぱいブラックベリーどっさりのっけて、ひび割れからチョコレートクリームがとろりとはみ出してくるような上等のココアマフィン、ああこの魅惑のひび割れ。

Pain3
みずみずしいフランボワーズたっぷり、もう見るからにジューシイ…木苺の香り大好きなんだな、モウ。

Orange
きっと生地にもたっぷりオレンジジュースが練り込んであるに違いない、ふんわり南国の太陽みたいな黄金の色、いい香りが立ち上ってきそうなオレンジパン。

Pains
そして季節はやっぱり苺なんだよなあ。苺山盛りもりもりパイ。

Roll
あらら、いつの間にかピエール・マルコーニも入ってたんだ。

有名なおいしいショコラだけじゃなくてケーキもあるんだね。黄金のコンビネーション、ふんわり卵色スポンジにカスタード、ミルキーな生クリームでやわらかそうな「のの字ロール」。切り口がのの字。モンブランヴァージョンもあったよ。

…さて明るい暖かいビルを抜けて絵本屋さんに向かう。

Moon1
…なんか、店名見ただけで入りたくなったぞ。

Moon
地下の店に入ってゆく階段、月がだんだん満ちてゆく。

秘密の地下異界に降りてゆくよなわくわくにくらくらしそう。
稲垣足穂の「千夜一夜物語」の中の乱暴者のお月さまが出てきそうだ。
(稲垣足穂のキイワードも「都会」なんだよな、そして夜の街の幻想。)

Lebon
この南欧風レストラン、如何にもパリの裏通りの可愛いレストラン風の佇まい。

高校時代から素敵だな、と思ってた憧れの老舗のレストランなんだけど、ちょっと場所が変わった。でも相変わらず可愛いのは変わらない。窓辺にはいつも暖かな灯りを灯したランプと大きな花瓶にあふれるような白い花束。

Mokko1
門のアーチを形作っているのは白のモッコウバラ、もう咲き始めてる。

Mokko
折しも薄日が。
五月の光に咲き乱れる白蔓バラのアーチを思った。

大島弓子の「つるばらつるばら」っていう漫画があったのを思い出す。いかにも少女漫画的な浪漫なつるばらのアーチへの憧れが、思いがけないほど切ない辛口の人生の哀愁を描き出していた。

Lebon1
あたたかい五月の昼下がり、こんなところでゆったり過ごせたら。あの陰鬱な詩人、萩原朔太郎だって「五月の貴公子」になって幸福な「閑雅な食慾」みたいな詩をつくるだろう、なんて思うよ。

「私はゆつたりとふほふくを取つて/おむれつ ふらいの類を喰べた。」ってね。

 *** *** *** ***

さてとりあえずの目的地。
Tom
トムズボックスはセレクトされた小さな絵本の専門店。いつも選び抜かれたイラストレーターの個展をやっている。この日は片山健さんの個展をやってたのだ。

(中は撮影できないので写真は看板だけね。)
片山健さんのはデフォルメされた大胆な色遣いのものしか知らなかった。妖しい魅惑の表情の精密画的なタッチのもの初めて見て、ちょっと吃驚。

もともと片山令子さんの小さな童話が好きだったんだけど、この片山健さんとご夫婦だとは知らなかった。令子さんの文章で健さんのイラストで、いくつもの絵本を出しておられる。ご夫婦のコラボで絵本をつくりあげるなんていいなあ。

結構多いんだよね、日本でも海外でも。姉妹や夫婦で絵と文章でコラボしてひとつの作品を作りあげているのって。仕事と人生が分かちがたく結びついている、家族。

中川李枝子さんと山脇百合子さんの姉妹ユニット、吉田ご夫婦のクラフト・エヴィング商會、ぽっぺん先生の舟崎克彦と舟崎靖子さんの童話。

竹下文子さんはクロネコサンゴロウシリーズで、ご夫君のイラストレーター鈴木まもる氏とコラボ。そして大好きなイラストレーター、絵本作家の柳生まちこさんはやっぱり絵本作家の柳生弦一郎さんとご夫婦。

業界内での出会いと結婚、っていう状況的な条件ももちろんだけど、なんだろうな、同じ道を目指して同じ世界を見て互いの夢を語り合い刺激し合い二人でひとつの作品を作りあげる、人生のかたちそのもののようだ。

 *** *** *** ***

さて、帰り道。

道端で鶺鴒に邂逅。
Bird
可愛いのう、とカメラ向けた途端お尻向けられてしまった。

そして日立の森の横。

ものすごい至近距離でホーホケキョ。
大慌てで上空を探して、発見!

Birdu
大興奮でカメラ向けた途端お尻向けられてしまった。

「カメラ向けた途端お尻向けられてしまった。」連続シリーズである。


しかしこんなに至近距離で鳴いてる鶯の姿初めて見たかも。
迫力のアカペラ大声量。

通りがかった家族連れと

「近いですね。」
「いたーっ!いましたよ、あそこ、あそこ。」
「えっ、どこですか、どこ⁈」

と大騒ぎ。

ウグイス、今年は何だか最初から結構上手だったな。
ここしばらく、毎日贅沢にこの美声を浴びているよ、ホーホケキョ。

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2013年7月10日 (水)

母の絵

ヤマモモ母は多趣味である。

絵も描く。

なにしろエネルギッシュなのだ。
ご町内の絵のサークルにもバリバリと参加している。

…ということで、リビングの壁にはよく新作が貼りつけられている。

Pic
この女の子の絵、遠目で見ると実はちょっと怖い。
アンティークドールのような、ガラスのように透き通るあの瞳の怖さがある。

「怖いよ。」
と言ったら、「まあ失礼な。」と怒られた。

「遠くから見ると怖いけど近くで見ると可愛いだけなのよ。」

近くによって見たら、アラ不思議。
ホントに怖くないのだ。可愛いだけ。

へえ。

そう言えば、人の顔ってそういうとこあるな。遠目の印象と近くで見る印象が違うこと。

井辻朱美さんの作品で、そんな風なシーンがあった。
近くで話すとにこやかで感じの良い主人公の味方をしてくれそうな女性なんだけど、街中で遠目にふと見かけたとき、奇妙にバランスを崩した不気味さを湛えていた、というような。

その女性の正体は悪だくみをしていた魔女だった、というような話だったと思う。

人間、近くに寄ったとき見える、いわゆる目ヂカラによって大きく左右される印象と、遠くから見て初めて見える全体バランスとしての姿の印象は大分異なるのだ。

ちょっとインドの「群盲象を評す」の逸話を思い出した。
(お話はこちら

真実がどちらにあるか、というような単純さではないけど。
木を見ることと森を見ることの違い、とも。

Pic1
この絵は迫力美人。大きいのだ。本物の顔の倍以上あるぞ。

Pic2
ターシャ・チューダーさんの絵本とかも好きということで、こんな風によく模写もしている。

好きな人の絵のタッチに、自分の描く絵のタッチって似ると思う。母が「この絵好き」というとき、その絵のイメージは、母自身の描く絵に何処か通じてゆくものがある。

Pic3
雰囲気のある表情だ。

私は基本的に、本格芸術絵画的な絵よりは、絵本的な、デフォルメされたデザイン要素の強いイラストが好きだ。

だけど、こんな風に好んで人を描く気持ち、人物を描く面白さ、っていうのも、ちょっとはわかるような気もするんだな。ウン。

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2013年1月 9日 (水)

不忍池~国際子ども図書館

そろそろお正月気分もおしまい、の日曜日、以前から一度行ってみたいと思っていた上野の国際子ども図書館へ。

…の前に、不忍池に寄ってみる。

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随分近くまで寄ってもじっとしていてくれた。

とてもきれい。美人のトリさん。

どうしてこんなにキレイなんでしょう。エステ通って最高級のシャンプーとトリートメントしてるとしか思えない、

と、至近距離でカメラ構えてたら、

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「…なにか?」
「すみません、これはとんだ失礼を…」

不審な顔をされてしまった。

3
これは別人(鳥)。
足の色が違うデショ。寒そうにまぶしそうに冬の太陽を見つめる。

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水面には氷が張ってるのだ!

…そんなにじいっと見つめないで。

 

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上野公園は、週末ストリートミュージシャンが多い。
念仏唱えるときの鐘で、不思議な幽玄の音。しかも和装のかっこいい青年。

シンギングボウル(ドニパドロ)っていう、チベットの密教の法具らしい。
場・人・物を浄化する、瞑想のための音楽、だって。

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ものすごい寒いのに、ベンチで将棋を指すおじさんたち。
しばらくしたら、ギャラリーが増えていた。

上野公園は、おじさん率が異様に高い。

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「旧東京音楽学校奏楽堂」
このあたりは、なんとも由緒のある味わい深い建築物が多いんだね。

この日は、午後からチェンバロのミニコンサート。300円。
こんなクラシックな音楽学校でチェンバロ演奏なんて、まるで賢治の時代だ。

心惹かれたけど、そんなに長時間の外出は身体もたないからなあ。

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着いた、子ども図書館!

重厚なクラシック建築と、モダンなガラス張りが融合した不思議な雰囲気。

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一階は、カフェと子供のための閲覧室。
ディスプレイにも工夫があって、落ち着いた暖かい灯りの灯る優しい空間。

そして、異国の言葉に訳された日本の絵本たち。

どの国のどの文化によって生きていても、その中の個々の人間の心の核のところには、このような、世界への最初の眼差しを感じたときの根っこの記憶が、普遍として、存在している。

それは、互いの心と心が共通に繋がれることのできる場所、交換しあえる文化の流通、豊穣への可能性を秘めた場所だ。決して失われることのない、パンドラの箱の一番底に大切にしまわれた最後の宝物、子供の心の根っこだ。

国籍を理由に個人を偏見バイアスにかけないための、己の心で見るための、その矯正力の、心の奥底の、源泉。

これさえ共通に感じられるなら、同じ世界を共有しうる同じ人間として認識できるなら、どんな政治的なあじきない争いの中にあっても、どのような洗脳や美学にそそのかされても、根本としての憎しみの誤りに気がつけるのではないか、というような気がする。(しかし、でこちゃんの訳…)

B3
擬音の表わし方も、国によって違うんだね。ピヨピヨ。

Doll
絵本から飛び出した、エルマーの竜。

児童書のコーナーには、どの図書館にも、必ず手作りのぬいぐるみやあみぐるみが置いてある。大抵、とても可愛い。

D1
「そいでね、エルマーとの冒険はさ…」
「ほうほう、ほうほう。」

Doll1
はらぺこあおむしも実体化。
クオリティ高いなあ。

D3
これはどっちかっていうと「魔女の宅急便」のキキじゃないか。

D4
「人形制作 矢野正枝」って札があった。
やっぱり、プロの人形制作の方の作品みたい。

D2
ウワー、これ、読んだなあ、憶えてる、懐かしいなあ。
原書のは一層かっこいい。

…さてさて、じんわりと堪能したので、次のコーナーへ。
のそのそと階段を上ってゆく。

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なんてかっこいい階段…

昔の建築物の、このたっぷりした貫禄、優美さって何なのかな。

重厚な歴史の重み、空間の贅沢さ。
合理性経済性から離れたところにある、何か。

 

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窓の外の風景も、歴史を経た大木や、クラシックな洋館。
うっとり、タイムトリップ。

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いえ~い、ハイソサエティごっこ~

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(しかし二階の海外の絵本の資料室は、日曜お休み。ちと残念。)

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ここは、三階イベントルーム。
時々、講演会とかやってるらしい。

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サンタクロースの貴重な本の展示。
本自体に、美術品的な価値が。

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本のミュージアムの部屋。
貴重な児童書の歴史が実物で眺められる展示。

ここの展示物は素晴らしかったんだけど、内部は撮影禁止、残念。

…さあ、そろそろ帰ろう。

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帰り道、公園に、手回しオルガン奏者がいたよ。

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氷は解けていない。
氷の上に、しんと立つ、まるでオブジェのような水鳥たち。

題して「三羽の水鳥」

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このトリは、なんかのヒナみたい。
いつかテレビで見たような。脚が鮮やかなグリーン。

凍った池の上歩いてて大丈夫なのかなあ。結構厚く張ってたようだけど。
(石投げたら、コン、と固そうな音。)


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後ろに見えるのは、夏、あでやかに咲いていた蓮の花の枯れた後。

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上野公園の怪しい骨董市。
テントの上に、さりげなくイグアナ君。

Robai
草臥れて、とぼとぼと家路を辿っていたら、ふわり、と仄かな香り。

…ああ、初蝋梅だ

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